通信教育部長からのメッセージ

通信教育部長 法学部教授 猪股 孝史通信教育部長  法学部教授
猪股 孝史

 21世紀を迎えるにあたり、わが国は司法制度改革を断行しました。その成果に、裁判員裁判制度の創設や法曹養成のための法科大学院の開設などがあることはご承知のとおりです。司法制度改革の背景には、規制緩和に向けた動きと歩調を合わせ、従来のややもすると過剰で不透明な行政指導に依存していた「事前指導・規制型の社会」から、司法制度のもつセーフティ・ネットである公正な法的救済に重点をおいた「事後監視・救済型の社会」への転換という、わが国における大きな潮流をみてとることができます。そうして、法の支配をわが国の隅々にまで行き渡らせ、誰もが安心して行動できる公正で自由な社会を実現させることが期待されているのであり、その意味で、21世紀は「司法の世紀」とでもよぶことができるでしょう。

 法制度のしくみとその役割を受け止めつつ、その根底にあるものを理解し、よりよい社会を築きあげていくことが、「司法の世紀」に生きる自立した国民にとって、その責務として求められているということに思い至るならば、法律学の学習は、たんに条文の精密な解釈や裁判例の理解だけにとどまるものではないということにもまた容易に気づくでしょう。法は、社会の一つの規範であり、ルールであることはたしかですが、その社会は、生きた人間の日々の営みによってかたちづくられている以上、法を学ぶことは、深い洞察をもって、社会や人間のありようを学ぶことでもあるはずだからです。

 本通信教育課程で学んでいる学生数は、現在、3500人ほどです。そして、そのうちの半数以上が働きながら学んでいる学生のみなさんです。法律学の深奥を探求したい、各種資格試験のための準備をしたい、職業上の武器として法律の専門的知識や知見を得たい、あるいは、生涯学習の一環として法を学んでみたいなど、その動機はさまざまですが、本通信教育課程は、そうした多様なニーズに応えることができるように多彩なプログラムを提供し、また、通信教育での困難を少しでも軽減すべく学習環境を整備し、拡充していくよう努めています。

 始めるのに遅すぎることはありません。大学教育の門戸は、いつでも広く開かれています。「司法の世紀」に生きるみなさんには、伝統ある法科の中央で、法を学び、そして、社会や人間のありようを学んでいただきたいと願っています。