卒業生の声髙坂 晶子 さん

法律は「社会と自分との関係」を理解する上での一つのツール

髙坂  晶子 さん
  • 入学:2019年4月(3年次入学)
    卒業:2021年9月
    就学時:40歳代
    居住エリア:東京都在住
    職業:弁理士(特許法律事務所勤務)
    (2022年2月掲載)
    ※髙坂さんの学習履歴は「履修モデルケース」に掲載しています。

現在のお仕事について教えてください。

 弁理士として特許法律事務所に勤務しています。大学では英語学を専攻しており、もともとは特許翻訳者として入所したのですが、翻訳の仕事をするうち知財法を体系的に勉強してみたくなり、一念発起。2018年に弁理士試験に合格して今に至ります。現在は、技術系の弁理士として発明の特許権利化業務全般に携わっています。 

中大通教で学んだ 2 年半は、お仕事にどのような変化をもたらしましたか?

 弁理士は知的財産についての専門家であるとはいえ、知財法は所詮特別法にすぎず、業務上も、民法をはじめとする一般法の知識の必要性を感じていました。中大通教で法律を体系的に学んだことで、法律家として必要な法的思考力が鍛えられ、さらには知財法に対する理解も深めることができました。知財法は頻繁に改正されるのですが、改正法や新判例を理解する際には、この法的思考力をフル稼働させています。また、弁理士の基幹業務の一つである「特許明細書」の作成では、レポート作成で鍛えられた論理的な文章を書く能力がスキルの向上に直結していると感じています。何より、「法学士」となったことで自信がつきました。

コロナ禍により、入学された時期と比べて対面型のスクーリングの実施数が少なくなり、オンラインスクーリングが始まりました。ご自身の学習計画等で変更した点があれば教えて下さい。

 中止となってしまった対面型のスクーリングのうち、オンライン方式に切り替えられたものについては、開催時期にかかわらず受講を申し込みました。私の場合、後述するように、スクーリング開催日等から逆算する形で学修計画を立てレポートの作成をしていたので、スクーリング日程が変更になったことで、書きかけのレポートをひとまず置いておいて、急遽別の科目の文献を新たに準備することになったり、レポートを一から作成することになったりして慌てました。また、対面型のスクーリング受講の際は、教授や他の受講生との交流を毎回楽しみにしていましたので、オンラインになったことでそのような出会いがなくなってしまったことはとても残念でした。
 もっとも、振り返ってみれば、本来であれば遠隔地での開催だったために受講を諦めていた対面型のスクーリングが、オンライン開催となったために受講可能になった点や、感染のリスクを気にせず自宅で受講できた点、リアルタイム配信時にはチャット欄で講義中にすぐ質問ができた点など、プラスの面も多かったように思います。  

髙坂さんは入学されてから、毎月コンスタントにレポートを提出されていました。レポート作成にあたって、ご自身の中でのルール等あれば教えて下さい。

 入学当初から、できるだけ短期間で卒業したいと考えていたので、単位の修得を最優先に、成績は二の次と割り切り、まずはレポート課題を見て、教科書の必要な部分を読み、分からない部分があってもとりあえず書いて提出する、という形で進めていました。
 それでも最初はなかなかペースが掴めずにいたのですが、卒業に必要な単位数を科目試験の回数で割ってみると、1 試験期あたり 10 単位程度、すなわち 2 ~ 3 科目受験すればよいことがわかりました。試験の時間割は予め決まっているので、まずは受験科目を決めてしまい、スクーリングをペースメーカーのような形で学修の中心に据え、科目試験の受験科目、参加予定のスクーリング等から逆算して、必要な期日までにレポートを合格させる、という自分なりの「期限」を設定したのが功を奏したように思います。
 提出にあたっては、まずは、自分で決めた「期限」に間に合わせることを目標に、最初から完璧を目指さず、とにかく書いてみることにしていました。弁理士試験でも論文の試験がありますので、多少なりとも自信をもって最初に出したレポートがいきなり不合格となってしまったときは正直ショックを受けましたが、資格試験のための勉強から、本質を追求する姿勢に切り替える必要があることに気付かされました。科目によっては何度再提出しても合格できず落ち込むこともありましたが、インストラクターからの指摘を真摯に受け止めて見直しをし、2 週間~ 1 か月以内には再提出するようにしていました。また、インストラクターのアドバイスにこちらの理解が追いつかないような場合には、通信欄に「○○とご指摘いただいている箇所は、△△と理解して、このように修正しました」と具体的に記載するなど、積極的にコミュニケーションをとるようにしていました。

メディア教材を多く利用されています。どのように活用されましたか?

 主に受講予定のスクーリングの予習に活用していました。メディア教材は、オンデマンドスクーリングと同一のコンテンツでレジュメも入手できます。しかも最初から早送りで聴けるので、通勤時や家事の合間に視聴し、その科目の全体像をざっくりと把握するのには非常に有効でした。受講料もテキスト 1 冊分と同じくらいですし、予備知識ゼロの状態でテキストを一から読むよりも効率的だったと思います。 

中大通教で学んで、一番印象残っている科目とその理由を教えてください。

 初年度に夏期スクーリングで受講した廣岡守穂先生の「特殊講義2[福祉と女性]」です。
 女性の自立をテーマに、昨今の社会事情並びに先生ご自身及びご家族の体験談を踏まえた実践的な講義内容からは、私自身が3人の子育てと仕事との狭間で少なからず抱えてきた葛藤やある種の閉塞感などが想起され、種々の気づきがありました。
 先生の御退官により閉講となってしまったのは非常に惜しまれます。

印象に残っている在学中のエピソードを具体的に教えて下さい。

 1年目の夏期スクーリングで、京王線の多摩動物公園駅からの"山道"を毎日歩いて通ったことです。友人に冗談半分で「今日は山奥に行ってたよ(笑)」と写真を送ったら、「わあ、気持ちよさそう!マイナスイオンたっぷりだね~」と返信が。後で訊いたところ、夏休みで避暑地にいると勘違いしたそうです。確かに、蝉も鳴いていて、森林浴さながら。自然豊かな多摩キャンパスは、都会の喧騒を離れ、日常をしばし忘れて勉学に没頭するにはうってつけの環境でした。コロナ禍で、結局、多摩キャンパスに通ったのはこの夏期スクーリングが最初で最後となってしまったのはとても残念です。  

科目試験対策はどのようにされていましたか?

 定期的に送付される科目試験の過去問題をもとに、エクセルで対照表のようなものを作り、左欄に問題、右欄に自分なりに論点や定義を整理したものを予め用意していました。勉強にあたっては、市販の司法試験用のテキスト等も活用しました。事案や論点が図などを使って分かり易く解説されており、また論証表現なども参考になりました。

髙坂さんにとって、法律を学ぶことはどういうことか、教えて下さい。

 難しい質問ですね......。
 法律は、社会秩序を維持するためのルールであり、「社会と自分との関係」を理解する上での一つのツールだと考えています。法律を学ぶことは、法の背景に存在する「あるべき社会」といった哲学に基づいて現実の 社会状況を認識すること、そして、認識した社会に対し、自分はどのようなスタンスで関わっていくことができるのかを考え、実際に主体的な関わりを実践していくことではないでしょうか。

今後の目標を教えて下さい。

 折しも在学中に、勤務先に「法務部門」が発足しました。今後は、弁護士の先生方と協力して特許侵害訴訟等に関わる機会も増えるかもしれません。訴訟の場面では、民法や民事訴訟法といった、知財法の範囲に留まらない幅広い法律の理解が求められることになると思います。
 また、「日本でビジネスを始めたい」という外国のクライアントからの相談への対応業務に翻訳者として協力したことがあります。その際は、商法や会社法で学んだ知識が非常に役に立ちました。
 今後も、中大通教で学んだ法学の知識を実務に活かせるよう研鑽を続けていきたいです。
 さらに、弁理士は、所定の条件を満たせば「特定侵害訴訟代理業務試験」の受験資格が得られます。弁理士は、弁護士ではないので、原則として訴訟の代理人にはなりえませんが、この試験に合格すると、弁護士とともに、「特定侵害訴訟」、すなわち、特許等の産業財産権の権利侵害に係る訴訟の代理人になることができるというものです。現段階では、実務で訴訟に携わる機会は少なく、またその必要性もあまり大きくはないのが実状ですが、 せっかく勉強した法律の知識を生かすべく、いずれは挑戦したいと思っています。