司法試験合格者インタビュー 室根 由了 さん
司法試験合格への道のりは、長距離マラソンのようなものであり、決して易しいものではありませんが、方向性を見失うことなく、一歩ずつ着実に前に進めば、いつか必ずゴールにたどり着くことができると思います。
入学:2019年4月(1年次入学)
卒業:2023年3月
就学時:30歳代
職業:元国家公務員
居住エリア:千葉県在住
2024年 司法試験合格
(2024年12月掲載)
卒業:2023年3月
就学時:30歳代
職業:元国家公務員
居住エリア:千葉県在住
2024年 司法試験合格
(2024年12月掲載)
司法試験合格おめでとうございます!今のお気持ちを教えてください。
ホッとした。その言葉に尽きます。私は、家庭をもっており、幼い二人の娘がいます。娘たちを養いつつ、家のローンも支払っていかなければならない状況で、それまで続けてきた公務員の仕事を辞めてロースクールに進学しました。私が進学したロースクールでは、夜間授業が開講されており、夜間授業を履修すれば、仕事を続けながらロースクールに通うことも可能だったのですが、司法試験に合格して弁護士になると決めた以上、1年でも早く合格したかった私は、ロースクール進学を機に、仕事を辞めて学業に専念することにしました。しかし、ロースクールに進学したとしても、必ず司法試験に受かるという保証はないので、「受からなかったらどうしよう」という不安な気持ちが常にありました。妻が仕事をしていたとはいえ、私の無収入期間が長引けば、家計に少なからず影響が出ることになり、家族に迷惑をかけることになります。そのような事態を避けるため、何とかしてロースクール在学中に合格しようと必死に勉強していたのですが、結果的に、その目標を遂げることができ、本当に良かったと思っています。
本学を卒業されてから司法試験合格まではどのような道のりでしたか。
本棚の一部です。すぐに検索できるよう、カテゴリーごとに分けて収納していました。
私は、仕事をしながら中大通教で法学を学んでいたのですが、あと1年ほどで卒業できるという見込みが立ったときに、ロースクール進学を決意し、いくつかのロースクールを受験しました。ロースクールの受験勉強に本格的に取り組んだ期間は、半年間ほどであったと思います。このときは、仕事をしながら、中大通教のレポート課題やスクーリングをこなし、ロースクールの受験勉強もしなければならない状況で、非常に大変な日々ではありましたが、すべての余暇を捧げて勤しんだ結果、運よくロースクール入学試験(既修者コース)に合格し、その半年後に、中大通教も無事に卒業することができました。こうして晴れてロースクールに進学したわけですが、私の法律知識は、当時まだ浅く、入学当初は授業についていくので精一杯でした。しかし、中大通教で身につけた学習力によって、新しい知識を順調に吸収していくことができたため、入学時には平均程度の成績でしかなかった私は、ロースクール2年目を迎えるころには、学費全額免除の奨学金をもらえるほどの成績に達していました。しかし、それでも司法試験の過去問を解くと分からない点が多く、ロースクール在学中に司法試験に合格できる自信は全くなかったのですが、「応援してくれている家族、ロースクールの先生方のためにも、やれるだけのことはやろう」という思いで、一心不乱に勉強に取り組んだ結果、何とか合格することができました。
中大通教で法律を学ぼうと思ったきっかけを教えてください。
私は、高校卒業後、大学には進学をせず、しばらくフリーターをしていましたが、親の勧めもあって、20代前半のときに国家公務員(入国警備官)採用試験を受験して合格し、法務省入国在留局(現:出入国在留管理庁)に採用されました。こうして国家公務員となり、主に地方局で勤務していたのですが、仕事を始めてから15年が経ち、重要な仕事を任せられるようになると、毎日のように自分の知識不足を痛感するようになりました。私の仕事は、法違反外国人の摘発、収容、送還といった入管法に定める退去強制手続に関わるものでしたが、仕事を進める中で、警察官や弁護士と接する機会が多く、そういった方々と対等にやりとりするためには、行政法、刑法、刑事訴訟法といった法律の知識が必要不可欠でした。そのような中、中大通教のことを知り、ここならば権威ある大学の講義を廉価で受講でき、しかも、通信制のため仕事と両立できると考え、38歳のときに入学しました。ちなみに、当時の私は、司法試験に挑戦しようなどとは全く考えていませんでしたが、中大通教において法学を学んでいく中で、法曹の仕事に対して興味がわくようになり、自分も努力すれば弁護士になれるのではないかと考え、司法試験に挑戦することにしました。
本学在学中、学習の中で挫折しそうになったり、苦労したことがあれば教えてください。また、どのようにしてそれらを乗り越えたのでしょうか?
こちらも本棚です。気になった判例をいつでも引けるよう,全科目につき判例集を揃えていました。
入学してから1年目は、レポート課題で問われていることは何か、分からないことをどのように調べればよいか、レポートはどのような形式で書くべきかなど、分からないことだらけで苦労しました。初めてレポートを提出したとき、色々と思考錯誤して作成したにもかかわらず、不合格で返ってきて大変ショックを受けたことをよく覚えています。その後もトライアンドエラーの連続でしたが、めげずに何度もレポートを作成して添削を受けているうちに、次第にレポート作成のコツのようなものが分かってくるようになりました。2年目以降は、1~2週間に1通のペースでレポートを作成していたのですが、平日の通勤中の電車の中で課題に関するテキストを読み込み、週末を使って一気に書き上げるという方法で、そのペースを維持していました。
仕事や他の生活との両立も含め、通教を4年で最短卒業するための学習スケジュールの管理方法を具体的に教えていただけますか?
中大通教卒業の際にいただいた賞状です。このときの喜びを忘れずに,努力は必ず報われると信じて司法試験の勉強をしていました。
通教を4年で最短卒業する秘訣は、年度が始まる前の履修登録時に1年間の単位修得目標を明確に定めて、その目標を達するために必要な具体的な計画を練り、立てた計画を着実に実行していくことだと思います。たとえば、毎年32単位ずつ修得していけば、4年間で卒業必要単位に達します。1年間が3学期に分かれていますので、毎学期8単位ずつ修得すれば、年間で24単位修得することができ、それに加えて夏期スクール等を利用して8単位修得すれば、年間32単位取得できる計算となります。つまり、1科目=4単位であるとすると、毎学期2科目ずつ履修し、それに加えて夏期スクール等で2科目履修するだけで、4年間で卒業できる計算となります。このようにして具体的にみていくと、中大通教を4年間で卒業することは、決して難しいことではないと分かります。大変なのは、レポート作成の勝手が分からない1年目だと思いますが、その時期をうまく乗り越え、自分なりの学習メソッドを確立することができれば、もはや卒業は確定したといっても過言ではないと思います。
中大通教で学んだことで、お仕事や日常生活で役に立ったことや良かったことはありますか?
司法試験を受験するに当たり、法学の知識が役に立ったことはいうまでもありませんが、それ以外の科目も、大いに役に立ったと感じています。たとえば、勉学に忙しくても、保健の授業で学んだ健康維持の方法を可能な限り実践していたため、毎日机にかじりついていた日々の中でも大きく体調を崩すことはありませんでした。また、心理学の授業で学んだ学習心理学のイメージは、司法試験に必要な大量の知識を効率的に短期間で記憶していくのに役に立ちました。哲学の授業で学んだ壮大な物事の見方は、日々の不安な気持ちを取り払ってくれました。このように、挙げだしたら切りがありませんが、中大通教で学んだ法学以外の知識が、様々な面で司法試験受験をサポートしてくれたと思っています。
中大通教での学びがロースクール入試や、司法試験に役立つことはございましたか?
ロースクール入試においても、司法試験においても、天王山となるのは論文式試験です。そのため、この論文式試験をいかにして攻略するかが肝要となります。論文式試験に臨むに当たっては、あらかじめ膨大な法律知識をいつでも引き出せるように備えておく必要がありますし、その知識に基づいた自分の考えを答案として簡潔にまとめ、評価者に示す必要もあります。つまり、論文式試験を突破するためには、膨大な知識を効率良く吸収していく力(学習力)と、その得た知識を駆使し、答案に反映させる力(文章力、表現力)が必要となりますが、それらの力は、中大通教において数々のレポート課題をこなしていくことによって、自ずと身についていきます。私の場合も、中大通教を卒業する頃には、知らない論点があったとしても、テキストや判例に当たることで、自ら理解できる力が身についていたため、ロースクール入試や司法試験を受験するに当たり、必要な知識を素早く吸収していくことができました。また、試験本番においても、中大通教のレポート学習で培った文章力、表現力によって、短時間で要点をまとめた答案を作成することができました。結果として、それらが試験合格に結びついたものと感じています。
今後のキャリアビジョンや目標について教えてください。
私のような社会人経験者が法曹になるに当たり、強みとなるのは、それまで培ってきた知識と経験であると思います。私は、これまで出入国在留管理庁の業務に従事していた中で、労働、結婚・離婚、子の認知、難民等、在留外国人を巡る様々な法律問題に直面してきました。日本では、労働力不足を補うため、今後ますます外国人を受け入れていく方針を採っていますので、これらの問題は、今後増加していくことが予想されます。このような背景から、私は、司法修習を終えた後は弁護士となり、これまで入管の仕事で培ってきた知識と経験を活かし、外国人を巡る問題に積極的に取り組んでいくことで、平和的共生社会の実現に貢献していきたいと思っています。
同じ法曹の道を目指す志願者・通教生に向けてアドバイスをお願いいたします。
司法試験合格への道のりは、長距離マラソンのようなものであり、決して易しいものではありませんが、方向性を見失うことなく、一歩ずつ着実に前に進めば、いつか必ずゴールにたどり着くことができると思います。大切なのは、途中で心が折れないようにすることです。長い道のりの中で、ときには心が折れそうになることもありますが、そのようなときは、一度勉強から離れた上、法曹になろうと決意したときの気持ちを思い起こし、再び自分を奮い立たせることが必要です。通教生の中には、仕事をもっている方も多いと思いますが、幸いにして、ロースクールの中には、私の進学先のように夜間開講しているところがありますので、経済的不安がある方は、中大通教卒業後も、仕事を続けたままロースクールに進学して司法試験合格を目指すことが可能です。また、学習が進んでいる方は、中大通教在学中から司法試験予備試験合格を視野に入れて学習を進めるのも有意義だと思います。いずれにしても、司法試験合格に向かう道はすでに用意されてありますので、法曹志望の皆様は、自分の進むべき道と、そのゴールにたどり着くための計画をしっかりと立てた上、その計画に従って毎日一歩ずつでも前に進み続けていただけたらと思います。