卒業生の声鈴木 啓之 さん

今、法律をしっかり勉強しておかないと、税理士として生き残れない。

鈴木  啓之  さん
  • 入学:2011年4月(3年次編入学)
    卒業:2015年3月
    就学時:30歳代
    居住エリア:大阪府在住
    職業:税理士
    (2016年10月掲載)

税理士になったきっかけを教えてください。

 高校卒業後、専門学校に進み、日商簿記1級の資格を取得しました。専門学校卒業後、一般企業に入社したのですが、結果云々ではなく学歴で評価されてしまう悔しさに耐えきれず、自分の実力で勝負したいと思いました。そこで、簿記の資格が活かせる職業がないか思案し、「税理士」になろうと思いました。

税務と法律の関わりについて普段の仕事から感じることを教えてください。

 税務といっても、法律で定められた方法に従わなければいけないので、税務と法律は、切っても切れない関係にあります。ここでいう法律には、租税法のみならず、憲法や民法などの法律も含まれます。ただ、多くの税理士は、租税法の適用につき、憲法や民法などの法律との結びつきまで深く考えずに仕事しているように感じます。

本学に入学されたきっかけを教えてください。

 中大通教の存在は以前から知っていたのですが、なかなか決断できませんでした。しかし、武富士事件(最高裁平成23年02月18日判決、集民第236号71頁)を読んで、「今、法律をしっかり勉強しておかないと、税理士として生き残れない」と痛感し、法律を学ぶことを決意しました。私は、法律を「紛争解決」の手段よりも、「紛争予防」の手段として活用したいと考えています。専門的な法律問題は弁護士に任せるにしても、憲法や民法、刑法といった基本的な法律の知識は、税理士も身につけておくべきだと思っています。

法律を学んで仕事に役に立ったことがありましたらできるだけ具体的に教えてください。

 レポートをたくさん書いたことで、「法の適用」を意識して文書を作成する習慣が自然と身につきました。この習慣のおかげで、紛争予防の手段として活用している「税理士法第33条の2に規定されている書面」の作成においても、1)事実認定に問題がないのか、2)法の解釈に問題がないのか、3)法の当てはめに問題がないのか、再点検しながら作成する習慣が身につきました。

法律の専門家である弁護士と比較して、税理士に不足していると感じる点はありますか?

 税理士は、税理士法第1条において、「税務に関する専門家」と規定されていることから、「法律の専門家」である弁護士とは、一概に比較することは出来ません。ただ、税務の場合も、私法上の法律行為があった後に租税法が適用されるので、税理士業務を遂行するためには私法上の法律知識が必要不可欠となります。しかし、税理士試験では、税法の知識だけが求められ、憲法や民法、刑法といった法律の知識は求められていません。弁護士と比較して不足している点をあげるとするならば、憲法や民法、刑法といった法律の知識を学ぶ機会が不足している点にあると感じています。

お仕事と学習の両立で何か工夫されていることがありましたら教えてください。

 「お客様に最高のサービスを提供するためにも、出来るだけ早く法律の知識を身につけたいと思っております。そのためにも「学習も、仕事の一部だ!」と強く意識付け、可能な限りスクーリングに参加する方向で学習計画を立て、レポート提出期限から逆算して勉強に取り組んでいます。

卒業論文のテーマは、もう絞られていますか?

 日本国憲法第30条に規定する「租税法律主義」をテーマとして考えています。この租税法律主義といえば日本国憲法第84条を軸として考えられてますが、憲法を学習したことで、本質的には日本国憲法の「第3章 国民の権利及び義務」で規定されている日本国憲法第30条を軸として考えるべきではないのかと思ったからです。現行の日本国憲法における条文の見出しは、あくまでも編集者において付されたものなので、日本国憲法第30条を「租税法律主義」、日本国憲法第84条を「租税法律主義の遵守」と位置づけしたうえで、租税法律主義の存在意義と射程範囲について、深く掘り下げて考えてみたいと思っております。

今後もっと学んでいかなければならないと感じることは何でしょうか?

 細かな条文を覚えるのではなく「法の精神」について深く考え、「法とは、何か?」、「正義とは、何か?」を学ぶことが大切ではないかと強く感じています。

志願者の方に一言お願いします。

 入学する前に、判例研究会や裁決事例研究会などに参加しておりましたが、「法学」や「憲法」、「民法」など基本となる法律を学んだことで、理解が深まりました。特に、憲法を学んだことは、今後、税理士として活躍するうえで大きな財産となりました。税理士だけでなく、法律に携わる職業の方には、ぜひ、真剣に法律を学んで頂きたいと強く願っています。