導入教育 : 導入教育リポート

「導入教育A」を担当するのは、大学における「初年次教育」に携わる教員で、読解力と表現力の養成をめざします。

「導入教育B」を担当するのは、新司法試験に合格した新進気鋭の弁護士をはじめ、法律学に精通した専門家です。

  • 教員見出し

    遠藤先生 遠藤輝好 先生 
    「導入教育B」担当

    東京虎ノ門法律事務所
    中央大学ロースクール修了
    2008年弁護士登録


  • 法律に関わる仕事に就いている在学生の動機として、「特別法だけでなく、法律を体系的に学びたい」ということをよく聞きます。その場合、気をつけなければならないポイントはありますか?

       法律は「積み重ねの学問」だと思います。すぐにマスターできる特効薬はないように思います。
       ですから,焦らず,基本科目(とくに憲法,民法,刑法)から,じっくり勉強するのがよいと思います。
       基本科目がマスターできていれば,応用科目を修得することはそれほど大変ではありません。逆に,基本科目の理解が不安定ですと,応用科目をマスターすることはできません。たとえば,「労働基準法」を勉強する場合,この法律は,使用者の違法行為を取り締まる「行政法」であると同時に,違反者に刑罰を科す「刑法」であり,さらに,労働契約にも関わる「民法(契約法)」の側面ももっていますから,これら基本科目の履修を終えてから取り組むのが合理的なのです。
       もちろん,興味のある分野をきっかけに学修を進めることは決して悪いことではありませんが,併行して,「基本科目から積み重ねること」を意識した学修スケジュールも組むのがよいと思います。

    先生が授業を行う際に心がけている点・意識している点などはありますか?

       「条文」を大切にしてほしいと思っています。法律の解釈論の対象は法律の「条文」ですから。
       ですので,なるべく条文と「にらめっこ」できるような問題を取り上げるように心がけています。条文に書かれている言葉(文言)を,まずは自分の日本語の感覚で素直に読んでみる...このことを強く勧めます。もちろん,そう易々と読めるものばかりではないと思いますが,こういう過程を経ると,「条文のどこが分かりにくいか」がハッキリし,勉強する際の問題意識が明確になると思います(分かりにくかった文言については,いわゆる「論点」になっていることが多いはずです)。

    では教科書はどのような位置づけと考えればいいですか?

       教科書は「条文を読むガイドブック」として使ってほしいなと思います。
       どうしても「教科書で正しい知識を覚えたい」という意識で勉強しがちになりますが,やはり条文を重視して,「条文を読んでから教科書を読む」ことを実践してください。授業では,教科書的な説明をする前に,必ず条文を引いてもらい,その文言と「にらめっこ」してもらうようにしています。

    法曹になることを目標としている在学生も多くいます。現在活躍されている先生からみた、弁護士として法律以外に大切なこと(資質)がありましたら教えてください。

    遠藤先生

       「人の話をよく聴く」ということだと思います。これにはいろいろな意味があるのですが,その一つとして, 「質問できるように聴く」ということがとても大切だと思います。
       「質問」は,その人の話に興味をもっていなければできません。その人の話に「当事者目線で入り込んでいる」からこそ質問できるのです。
       もちろん依頼者から相談を受ける際も心がけていますが,そのような場面だけでなく,家族や友人との会話,そして,授業中も,教科書を読む際も...ストーリーの中に入り込んでください。そうすれば,ちょっとでも分からないことがあれば,「どうして?」と質問したくなるはずです。適切な質問によって,コミュニケーションは大いに深まることでしょう。コミュニケーション能力があらゆる場面で重要であることは言うまでもありませんが,「質問力」はその要素だと思います。
       また,質問は,事実を把握し事案を解き明かすツールでもあります(たとえば,検察官は取調べにおいて被疑者に質問を当てていきます)。そして,質問は厳しい「批判」ともなるものです(教える側にとって「無邪気な質問」ほど恐いものはありません。「どうしてそうなるのですか?」は「教え方が悪くて分からない!」とほぼ同義です)。鋭い質問によって,議論はワンランク上に導かれることでしょう。
       「質問できるように人の話をよく聴く」ことを意識してみてください。スクーリングで皆さんからたくさんの質問をいただくことを心待ちにしています。

    • 教員見出し

      湯浅先生 湯浅俊夫 先生 
      「導入教育A」担当

      神奈川県生まれ。横浜市在住。
      大学で日本文学を、大学院でカウンセリング心理学を学ぶ。
      現在、一橋大学、北里大学などで「教育相談」「臨床心理学」「文章表現法」を担当。町田市の小中学校の「書く授業」のコーチ。スクールカウンセラー、筑波大学で相談員。他に、広告会社で社員研修に携わる。


    • 「書くこと」から遠ざかっていた人、慣れていない人にとって、ふだん頭の中でぼんやりと考えはあっても、「書く」という自分の考えを形にすることにひとつのハードルがあるように思います。書くことで何が磨かれていくのでしょうか?

         書き言葉でも、話し言葉でも、自分の意志や感情を伝えることはできます。しかし、話し言葉は伝達性に重きが置かれるのに対して、書き言葉は考えること、深く考えることに重点が置かれます。つまり、「書くこと=考えること」になるのです。あいまいな思いや考えを書き言葉は(とりわけ論文の書き言葉は)許容しません。精密に、深く考えられるようになるには書くのが一番だということです。

      レポートを書いていると、自分の考えの薄っぺらさを感じたり、考える力のなさを感じて、ついつい他の人はどう書いているのか模範回答を見たくなってしまいますが...。

         できるだけ、何も見ないうちに、未熟でもいい、素手で自分の考えを一応書いてみることをお薦めします。でも、初心者で、文章のパターンを知りたい、論文の形式を知りたいと思う人もいるでしょう。そういう場合は、一つのテーマについて、複数の模範回答を見るようにしてください。そうすれば、一つの考えにだけ引っ張られないですみますから。

      湯浅先生が「授業」を行う際に心がけている点・意識している点などはありますか?

         一方的な「講義」ではなく、学生参加型の、アクティブ・ラーニングをこころがけています。授業を受けてみたら、あっという間に時間が過ぎた。それでいて、猛然とやる気が起きて、論文が書きたくなった。そんな授業が理想的です(笑)。私は「(教育の本質が)自分から知りたいと思うように励ますことにある」(言語学者チョムスキーの言葉)と信じているので。

      先生のリフレッシュ方法を教えてください。

         あんまりたいした趣味などないのですが、頭がつかれてくるとジャグリングをやったり、身体を動かしたり、ヘタな絵を書いたりしますね。あと、普段は読まないようなジャンルの本に手を出したり(例えば、料理本や、理系の本など)、しますね。ともかく、普段とコードを組み替えることをやるようにしています。